灯台を訪ねて-御前埼灯台 Omaesaki

御前埼灯台(おまえさき とうだい)

静岡県の御前崎市(おまえざきし)にある灯台です。

航路標識番号(国際番号) 2495 (M6228)
位置(緯度経度) 34 35.7N,138 13.5E
灯質 単閃白光 毎10秒に1閃光
灯高(平均水面から灯火中心:m) 54
光達距離(M:海里(1M=1852m)) 19
構造 白塔形
高さ(地上から構造物頂部:m) 22
備考 明弧 221° ~  104°
訪問日 2019年7月30日

ちなみに灯質欄の「単閃白光 毎10秒に1閃光」とは?
燈光会さんのホームページの中に分かりやすいページがあります。
灯台の光りかた」をご覧ください。
それによると「きまった間隔をおいて、ピカッと1回光るものです。」ですから、この灯台の場合は10秒間隔で1回ピカッと白色に光ることを繰り返します。

灯台の位置です。

御前埼灯台は参観灯台です。つまり灯台の中に入って見学することが出来るのです。
基本的にお休みは風雨が強くて危険と判断された以外は無いようです。

御前埼灯台は歴史ある灯台で「日本の灯台50選」に選ばれています。
灯台に関する詳しいことは「橙光会(航路標識事業の発展を助成し、航路標識に関する知識の普及を図ることを主目的に設立)」のホームページをご覧ください。
その中で「御前埼灯台」の紹介ページです。

明治初期に造られた灯台の設計は日本国内に灯台を設計する技術力がありませんでした。
そのため、いわゆる「お雇い外国人」と言われる外国の技術者の力を借りて造っています。
明治初期の灯台をじっくりと見ていると当時の海外技術者の設計思想、時代背景 そして設計者の思い入れなどを知ることが出来ると思います。
そして明治初期当時の姿のまま全く変わらずに残っているというのは稀です。
約150年を経ての老朽化は免れませんし、その間に発生した戦争によって灯台は標的にされ破壊された悲しい歴史があります。
放っておいては船の安全航海は出来ません。
その都度その当時の時代背景や技術力を反映した修復が繰り返されてきました。
新と旧が融合した灯台の姿を見る事は興味深いものがあり楽しいですよ。

灯質欄の「単閃白光 毎10秒に1閃光」をもうチョット詳しく。
毎10秒に1回光るって事はレンズは10秒で1回転している。従って1分間(60秒)では 60÷10で6回まわっている。・・・違います。
この灯台の場合、下の写真のようにレンズは2枚組み込まれています。
灯台の光を外から見るとレンズが自分の方を向いた時にピカッと光りを受ける事になります。
ですのでレンズが1回転すると2回ピカッと光を受けます。
ピカッとピカッとの間が10秒ですから1回転するには20秒。
1分(60秒)間では3回まわっている事になります。


レンズをほぼ真横から見た写真です。
フレネル式レンズって言うのですが、光の加減でしょうか緑色に見えます。
当初のレンズは戦争で破壊され現在は3等(三番目に大きな)2面レンズが取りついています。

建設当初のレンズは1等(一番大きな)8面レンズってやつが付いていました。
光る間隔は30秒です。レンズが8面付いていて光る間隔が30秒となると1周するには240秒、4分もかかってますね。

灯台の入り口上部に石板に刻まれた「御前埼灯台」の文字が見えます。

「初点記念額」です。
材質は鉄もしくは銅合金で鋳物のようです。
初点記念額は灯台の名称と初めて光を放った年月日又は年月を入れる例が多いように思うのですが、御前埼灯台の場合は名称と光を放った日の銘板が分離されています。

「ILLUMINATED  1ST  MAY  1874」英文ですから左から右へ読みます。
直訳しますと「1874年5月1日点灯」となります。
「1ST」はこの場合「初点」ではなくて5月の初めの日「1日」を表していると思います。

右から左へ縦書きです。「明治 七年 甲戌 五月 一日 初點」
甲戌」は「きのえ いぬ」又は「こうじゅつ」と読み、西暦1874年を意味しています。
「初點」の「點」は「点」の旧字体。

灯台は三重円筒になっています。
つまり3本の筒がアンテナみたいに組み合わさった状態です。
内側1本目の筒の内側中心部の空間はレンズを回転させるための「おもり」を上下させるための空間となっています。
灯台の中に入ってすぐ左の扉から中心部の空間に入れるようですが鍵がかかっています。
また、レンズのすぐ下にも階段を上がり切った付近に中心部空間に繋がる扉がありますが鍵がかかっています。万一落ちたら大変ですものね。
現在は「おもり」方式ではなくて電動モーターでレンズは回転しています。

内側の筒と真ん中の筒の間は灯台内を上り下りするための階段スペースになっています。
内側の筒の外側は白漆喰(しっくい)で塗装されているようです。(最近は別な塗料を使用しているかもしれません)
真ん中の筒の内側は真新しいようなヒノキの板で綺麗に覆われています。
2017年に大きな改修をした際に貼り替えた記録が残っています。
でも、灯台の中の階段を上ると途中にレンガを積んでいることがわかるような窓があります。
このレンガの積み方って「イギリス積み」って言います。

では真ん中の筒と外側の筒の空間はどうなってんの? って思いますよね。
2017年改修の際に初めて分かったようですがレンガの長手方向1枚分(約22㎝くらい)の空間になっています。そして真ん中の壁と外側の壁は円周8か所くらい(はっきりとはわかりません)に放射線状にレンガで繋げているようです。
以前は外筒は厚い壁と思われていたようです。
なぜこのよう構造にしたのか諸説あるようですがハッキリとはわかりません。
このような「なぞ」が灯台に惹かれるひとつになっています。

更に上を見ながら階段を上っていくと、もうすぐ一番上の階段って付近に階段の中央部分に四角い穴が開いた箇所が3段分あります。
写真は階段を下から見上げた方向に撮っています。
ちなみに階段の材質はレンガではなくって伊豆から運んできた「石」だそうです。
このあな何の穴?

穴の正体がわかりました。
撮影が手ブレしちゃってます。(;^ω^)
穴は貫通していてガラスが埋め込んでいます。
灯り採りのようですね。設計者(R・H・ブラントン)の配慮ですかね?

灯台の一番高いところ、踊り場に出ました。
高所恐怖症で更に風の強い日です。
せっかく来たのですから勇気を振り絞って踊り場に出て記念撮影です。
見えますか? 踊り場にいるのは私です。

2019年1月23日御前崎の朝です。
1月前後は太陽が灯台の右側から上がるので絶好の撮影条件になります。
御前埼灯台の西側にある「ねずみ塚」という小さな公園から撮っています。
1/100秒 F/5.6 ISO100 焦点距離35㎜判換算約175㎜。
手前に最近取り付けられた鉄柱が絵的には邪魔ですね。
もうチョット左にあれば良かったのになんて贅沢を言ったら海上保安庁さんに叱られます。

2018年12月16日御前崎の朝。「ねずみ塚」公園からの撮影です。
レーマークビーコンが撤去されて新しい鉄柱はまだ組み立てられていない時期です。
お気に入りの一枚です。

海岸から御前埼灯台を見上げた写真です。
この近くには大きな観光ホテルや旅館、民宿が多くあります。

御前埼灯台のある敷地内からの360°カメラの画像です。

御前埼灯台 – Spherical Image – RICOH THETA

おまけです。
灯台敷地は以前は全周をコンクリート塀等で囲まれて入り口は鉄製の門扉が付いていました。現在は北側の塀は撤去されて開放的になっていて門扉もありません。
南側の塀は安全のためか残されています。
その南側の塀の入り口となっていた所に門扉を取り付けるための門柱が残っています。
その門柱は石製で後ろ側に文字が刻まれています。

上の枠の部分です。
「昭和 貳年 六月 貳拾五日 建設」
下の枠の部分です。
「石工 坂田 〇吉」 〇の部分が読み取ることが出来ませんでした。
門柱ひとつ取って見ても歴史を感じることが出来ます。

北側の門柱はどうかって?
元の場所にはありませんが移設されて灯台敷地内にポツンと立っています。
こんな場所では灯台玄関口の門柱だったなんて気づいてくれる人はいないでしょう。
門柱は2本で一式。石工の坂田さんは何と思うのでしょうかね。

ありがとう!会えてよかった!
「これからも元気でしっかりガンバレヨッ!」って言ったら。
「おまえもな!」って返してくれたような気がしました。

さて、帰ることにしましょう。
次はどの灯台へいってみましょうか?        「灯台リストへ」


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デジイチの上サイドバートップ
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